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数学 参考書・問題集の選択

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はじめに

数学にも2つのステージがあります。先人の知恵を学んで知識を蓄え土台を造る暗記のステージと演習で蓄えた知識を脳から引き出す思考のステージです。教科書の公式や定理を覚えることだけが土台を造るステージで、その後の問題を解くことが蓄えた知識を脳から引き出すステージと思っていませんか?土台を造るステージはもっと幅広いです。

受験数学に必要なものと各ステージで使用する書籍の選択肢を紹介します。

受験数学に必要なものとは?

受験数学でまず必要なのは

  • 公式や定理の理解

です。次に問題を解くために必要な、

  • 解答として求められているもの
  • 使用できる公式や定理

の組み合わせを知識として蓄えることです。知識が十分に蓄えられると解答として求められているものに対して

  • 複数の使用できる公式や定理

を並べて

  • 問題の条件で使用できるものを選ぶ

ということができるようになります。

「因数分解をしなさい」となっているときに同じ単元の中でどの公式を選ぶかに加えて、例えば「三角形の面積を求めなさい」となっていたときに、積分を使う?三角関数を使う?それとも算数の公式を使う?などさまざまな単元からどれが条件に合うものなのかを決めるようなこともできるようにします。

次にこの一連の流れを複数組み合わせられるようにします

例えば網羅系の参考書の例題で(1)の解答を使用して(2)を解き、(2)の解答を使用して(3)を解くような問題があります。実際の入試問題では (3) だけが問題文にあり、(1)や(2)は解答として必要な場合などです。

ここまでが土台を造るのステージです。

その後は知識の定着率と脳から引き出すスピードを上げるために

  • 多くの問題で演習する

です。入試は制限時間があります。知識を素早く脳内から引き出し素早く計算することも必要です。

学校で配布される教材の役割

学校で配布される教材を使うと定期テスト対策にもなり最終的には内申点の向上につながるため、できれば使用したいですよね。一般的に配布される教科書、教科書傍用問題集、網羅系参考書、受験用問題集は次のような感じで使用されています。

教科書と教科書傍用問題集

定期テストの範囲として利用されています。

  • 公式や定理を解説で理解
  • 公式や定理の使い方や組み合わせ方を例や例題で理解
  • 例や例題で紹介された内容を定着のために実際の数字を使って練習

網羅系参考書の例題

夏、冬、春の長期休みの宿題として利用されています。

長期休み前の2から3つの定期テストの範囲の

  • 教科書レベルの復習
  • 応用問題で知識の整理とレベルアップ

のために行います。高校2年春休みまでに教科書、教科書傍用問題集、網羅系参考書の例題が完了していれば土台造りは終了です。

受験用問題集

高校3年の数学の演習の授業で使用されます。

今までの教材は教科書の視点から見た問題演習でしたが、受験用の問題集は入試問題の視点から見た教材です。出題頻度の高い問題が集められています。

次から教科書、教科書傍用問題集、網羅系参考書、受験用問題集の選択肢を紹介します。

教科書

数学で最初に必要なものは、教科書に含まれる

  • 公式や定理の解説
  • 解答・解説のある例、例題

の理解です。数学 I・A で教科書の解説がはじめの方からわからない場合は、

  • 中学の教科書の復習

に戻ってみましょう。

もし中学の教科書を今は持っていない場合は、数研出版の「体系数学」シリーズを使用できます。中高一貫校でよく使用されている教科書で、中学と高校の教科書の内容を分野別に並び替えてあります。店頭販売もされているので一般の書店で購入可能です。こちらの次の部分に中学の内容と一部高校の内容が含まれているのでつながりがよくわかります。

先取りしたい場合は、同じく「体系数学」シリーズの

を利用できます。2023年や2024年の受験には四訂版を使用してください。

理解した教科書の知識を定着されるために、例や例題のすぐ下にある練習問題はしっかりと解いておくとよいです。教科書の問題で解答・解説が必要な場合は、市販の

  • 教科書ガイド

で解決できます。

問題部分を別の問題集で解決するなら、定期テスト対策を唄っている教科書の章末問題まで網羅するものを使用しましょう。例えば次のようなものがあります。

  • 学研プラス よくわかる数学 I・A, II・B, III

2023年や2024年の受験には以前の版を使用してください。

先生には指導用解説資料などの授業で教える際の補足内容も配布されます。この部分も補うのであれば、教科書 + 授業の解説を含む参考書を使用ましょう。

こちらも教科書の章末問題レベルまで到達できるものを選びましょう。例としてはマセマ出版の次のようなものがあります。

  • 初めから始める数学 I, A, II, B, III Part 1, III Part 2
  • 元気が出る数学 I・A, II, B, III
  • 合格!数学 I・A, II・B, III

レベル別に3つに分かれています。「初めから始める」「元気が出る」「合格!」の順に行いましょう。2023年や2024年の受験には以前の版を使用してください。

まとめ

代わりに利用できる例に挙げた書籍をまとめると、次のような役割で使用します。

  • 教科書の解説 - 数研出版の「体系数学」シリーズ
  • 教科書の問題 - 学研プラスの「よくわかる数学」シリーズ
  • 教科書の指導用解説 + 問題 - マセマ出版の「数学」シリーズ

知識の定着には実際に練習で使ってみることが大切です。

教科書傍用問題集

もし別冊の解答・解説が配布されていない場合は、迷わず別のものを用意しましょう。知識を蓄える段階では、わからなければすぐに解答・解説を確認できる環境が必要です。

次のような条件を満たしているものを選ぶと良いです。

  • 解くための方針がある
  • I, A, II, B が一冊にまとまっていないもの
  • 教科書レベル全体をカバーしている

最適な選択の一つは、

  • 教科書と同じ出版社の網羅系参考書の例題を代わりに使用する

です。また教科書の時に紹介したマセマ出版の次のようなものもあります。

  • 初めから解ける数学問題集 I・A, II・B, III
  • 元気に伸びる数学問題集 I・A, II・B, III
  • 合格!数学 実力UP!問題集  I・A, II・B, III

こちらもレベル別に3つに分かれています。「初めから解ける」「元気に伸びる」「合格!数学 実力UP!」の順に行いましょう。2023年や2024年の受験には以前の版を使用してください。

代わりに網羅系参考書の例題を使用する

教科書と同じ出版社の網羅系参考書は、内容的にも教科書に準拠していて、その例題には詳しい解答・解説もあり、最近は動画による解説も入手できるので、代わりに利用できます。

まとめ

代わりに利用できる例に挙げた書籍をまとめると、

  • マセマ出版の「数学 問題集」シリーズ
  • 網羅系参考書の例題

です。

網羅系参考書

例題

難関大を目指すなら少なくとも例題は一度は触れておきたい問題です。

例題のよいところは、解くための方針が示されているところです。青チャートであれば「指針」、フォーカスゴールドであれば「考え方」、ニューアクションレジェンドであれば「思考のプロセス」の部分です。

各出版社で教科書との対応表や検索サイトが用意されているので、教科書と同じ出版社の網羅系参考書の例題を使用するとよいです。

  • 数研出版 青チャート,赤チャートの対応表はこちら
  • 啓林舘 Focus Gold の対応表はこちら
  • 東京書籍 New Action Legend の対応問題検索はこちら

他の網羅系が気になる場合は「青チャート、フォーカスゴールド、ニューアクションレジェンド、網羅系参考書の違い」や「赤チャート vs. フォーカスゴールド」「白、黄、青、赤?チャート式数字の選び方」の内容も参考にしてください。

もし全体の問題数が気になるのであればレベル別に解きましょう。例えば青チャートの場合、次のような5つのレベル別に例題を完成させていきます。

  1. コンパス 1, 2
  2. コンパス 3 の基本例題
  3. コンパス 3 の重要例題と演習題
  4. コンパス 4, 5 の重要例題
  5. コンパス 4, 5 の演習題

教科書の問題がすべて一度解けるようになっていれば、 問題数の75%を占める基本例題まではほぼ解けます。網羅系参考書の例題は他の例題や問題とのつながりの情報も含まれているので、解けない問題はその情報を使って同じ参考書内の下のレベルの問題に戻ることが容易にできます。

またニューアクションレジェンドの場合は「例題」に加えて「思考の戦略」まで行うとよいです。

例題以外の問題

高校1年や2年でかつすでに例題が解けるのであれば、是非取り組んでください。知識の整理とさらなる蓄積に大いに役立ちます。

教科書傍用問題集の代わりに例題を使用した場合

網羅系参考書の節末・章末問題を使用するか、また次のような条件を満たしているものを追加しても良いです。

  • 教科書の章末レベルから始まる
  • 入試標準レベルまで到達する
  • 解答だけでなくアプローチ方法など詳しい解説もあるもの
  • I, A, II, B が一冊にまとまっていないもの

教科書内レベルは教科書と網羅系参考書の例題で二度演習を行っているのでここであたらめて教科レベル全体を網羅するものを追加する必要性は低いです。条件を満たす実際の書籍では例えば次のようなものがあります。

1対1対応の演習は例題が章末レベルで、演習題が入試標準レベルです。総合的研究の例題は章末問題レベルから始まっています。

まとめ

代わりに利用できる例に挙げた書籍をまとめると、

です。

受験用問題集

高校3年の春からここに入れると順調です。

学校で配布されるものは、さまざまな受験生に対応できるように網羅するレベルは比較的広くなっていたり、特定のレベルに焦点をあてたものになったり、自身の志望校のレベルと合っていない場合が多いです。また別冊の解答・解説が配布されない場合もあります。

ここでは志望校に合わせた市販の問題集を使用する必要性が出てきます。

学校で配布される教科書の出版社のものは授業の演習に限定して、自身で利用するものを別途用意しましょう。次のようなレベル別に行うと、問題数を絞りつつ範囲全体を4周でき、知識の漏れを最低限にできます。

  1. 教科書の定理や公式の確認
  2. 入試基礎問題
  3. 入試標準問題
  4. 難関大 頻出問題
  5. 入試発展問題 (理系)

難関大を目指すのであれば 4 までは終了したいです。またここでは

  • I, A, II, B は一冊にまとまっているもの

を選択するとよいです。単元が学校で習う順ではなく知識として定着しやすい順に並べ替えてあることが多いです。

教科書の定理や公式の確認

高校3年の河合のマークや記述で偏差値 50 付近に届くようになります。教科書の内容に不安がなければ次の「入試基礎問題集」から開始できます。

定理や公式の確認を短期間で行うために計算を中心とした参考書・問題集を使用します。例えば次のようなものがあります。

  • 合格る計算 数学 I・A・II・B
  • 合格る計算 数学 III

入試基礎問題集

高校3年の河合のマークや記述で偏差値 50 を超えることができます。

レベルとしては教科書の節末・章末レベルの問題集です。例としては次のようなものがあります。共通テストの演習に入るまでにここまでは終了したいですね。

  • 河合出版 文系の数学 重要事項完全習得編
  • 東京出版 3月増刊 入試数学の基礎徹底

例題152問、演習問題120問です。「文系の」とついていますが、これとは別に理系のものがあるのではなく、II+B までの内容が含まれているという意味で、理系も利用できます。

2022年版は204問です。講義と問題に分かれています。「入試数学の基礎徹底」は2月末にその年のものが発売されます。

上記2冊は理系用に数学IIIがそれぞれ別の冊子で用意されています。

  • 河合出版 数学III 重要事項完全習得編
  • 東京出版 数学IIIの入試基礎/講義と演習

例題100問、演習問題111問です。

126問です。講義と問題に分かれています。

入試標準問題集

高校3年の河合のマークや記述模試で偏差値 60 を超えることができます。

難関国公立や早慶は、入試標準問題が確実に解けるようにならないと厳しいです。出題の中で標準レベルの問題が増えると易化、この上の発展レベルの問題が増えると難化したと言われます。

レベルを入試標準問題に絞り、演習量を確保するためには、次のような問題集があります。

  • 東京出版 4月増刊 「新数学スタンダード演習」
  • 東京出版 5月増刊 「数学IIIスタンダード演習」

294問です。3月末にその年のものが発売されます。1対1対応の演習の演習題が解けるのであれば、50%ぐらいは解けます。

135問です。4月末にその年のものが発売されます。1対1対応の演習の演習題が解けるのであれば、50%ぐらいは解けます。

難関大 頻出問題対策

受験用問題集の中で、ここで紹介する内容が唯一のインプットです。高校3年の河合のマークや記述で偏差値 65 を超えることができます。

新数学スタンダード演習と数学IIIスタンダード演習が一度解けるようになったら、次のような問題集でインプットして難関大での頻出の問題への対応を強化できます。

解答・解説にアプローチ方法が書かれているものを選びましょう。

文理共通
  • マセマ出版 「難関大 文系・理系数学 Ⅰ・A,Ⅱ・B」
  • 東京出版 「真・解法への道 数学 I A II B」
  • 数台文庫 「ハイレベル数学 I・A・II・B の完全攻略」

79問です。理系の場合「マセマ出版 難関大 理系数学 Ⅰ・A,Ⅱ・B,Ⅲ」も行うのであれば、こちらも合わせて行うとよいです。

94問です。こちらもおすすめです。

44問です。解答・解説中にある例も行いましょう。

文系

東大、京大で確実に完答すべき問題を使用して解説しています。

  • 東京出版 東大数学で1点でも多く取る方法 文系編
  • KADOKAWA 世界一わかりやすい 京大の文系数学 合格講座

61問です。東大志望以外の受験生でも記述の部分点対策にお勧めです。

60問です。京大志望以外の受験生にもお勧めです。

理系
  • マセマ出版 難関大 理系数学 Ⅰ・A,Ⅱ・B,Ⅲ
  • 数台文庫 「ハイレベル数学 III の完全攻略」
  • 東京出版 東大数学で1点でも多く取る方法 理系編
  • KADOKAWA 世界一わかりやすい 京大の理系数学 合格講座
  • KADOKAWA 世界一わかりやすい 阪大の理系数学 合格講座

74問です。

41問です。解答・解説中にある例も行いましょう。

東大で確実に完答すべき問題を使用して解説しています。東大志望以外の受験生でも記述の部分点対策におすすめです。

例題50問、類題50問です。京大で確実に完答すべき問題を使用して解説しています。京大志望以外の受験生にもお勧めです。

60問です。阪大で確実に完答すべき問題を使用して解説しています。阪大志望以外の受験生にもお勧めです。

入試発展問題 (理系)

理系向けです。高校3年の河合の記述模試の数学III型で偏差値 70 を超えることができます。8月末までに一度解けるようになっていれば、8月末の記述模試で偏差値80に届く可能性が高いです。

難関大志望の理系の場合は正答すべき標準問題を見極めて優先的かつ確実に解かないと致命的になりかねません。試験中に見分けるためにも標準問題よりさらに難しい発展問題にも取り組んでおくと良いです。

レベルを発展問題以上に絞った問題集して次のようなものがあります。

  • 東京出版 9月増刊 新数学演習
  • 数研出版 数学難問集

226問です。8月末に販売が開始されます。新数学スタンダード演習と数学IIIスタンダード演習の問題が解けるようになっていれば、半分くらいは解けます。

入門の部 55 問、試練の部 45 問です。

苦手分野の強化

次のような問題集を使って苦手分野の見直しと強化ができます。

  • 文英堂 合格る確率+場合の数
  • 旺文社 数学 軌跡・領域 分野別標準問題精講
  • 東京出版 微積分基礎の極意
  • 東京出版 マスター・オブ・整数

数学IIIの内容です。微積分の問題の解き方が網羅されています。

総まとめ

高校1,2年で土台を造り、高校3年で受験用問題集を使用したし知識の引き出しの演習ができるとベストです。

土台造り

まずは教科書の内容が理解できて、含まれている問題が全て解けるようになることがはじめの一歩です。次に網羅系の参考書の例題で知識の整理と上乗せをしましょう。「1対1対応の演習」でさらに上乗せされているとベストな状態です。

  • 教科書
  • 網羅系参考書の例題
  • 1対1対応の演習の例題と演習題

知識の引き出し

知識の蓄積なしにいきなり受験用問題集で演習に入っても、本来の知識を引き出すための利用ではなく、知識の蓄積するために使用することになります。知識がある程度蓄積されるまでは成績は伸びることはなく、時間もかかってしまいます。時間がない場合でも、少なくとも教科書と網羅系参考書の例題を読んですべて理解してから「合格る計算」の演習から開始するとよいです。

文理
  1. 合格る計算 数学 I・A・II・B
  2. 文系の数学 重要事項完全習得編
  3. 新数学スタンダード演習
  4. 真・解法への道 数学 I A II B
理系
  1. 合格る計算 数学 I・A・II・B
    合格る計算 数学 III
  2. 文系の数学 重要事項完全習得編
    数学III 重要事項完全習得編
  3. 新数学スタンダード演習
    数学IIIスタンダード演習
  4. 難関大 文系・理系数学 Ⅰ・A,Ⅱ・B
    難関大 理系数学 Ⅰ・A,Ⅱ・B,Ⅲ
  5. 新数学演習

出版社推奨の選択肢

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